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認知症ケア

【プロの介護士が解説】魔法のケア「ユマニチュード」

2020年3月10日

ユマニチュード

疑問をもつ人
ユマニチュードって何?魔法の認知症ケアって聞いたけど実際どんなことをするの?本当に効果があるのか知りたい。

そんな疑問にお答えします。

本記事の内容

・ユマニチュードを5つのブロックに分けて徹底解説します。
・ユマニチュードを実践してみた効果と感想

本記事の信頼性

この記事を書いている僕は、介護歴10年以上今現在も認知症通所施設で勤務していて、日々認知症ケアについて勉強しています。ユマニチュードについても書籍を読み、現場で実践しました。その時の体験を元にその効果や感想も合わせて解説します。

※3分ほどで読める記事になっています。3分後にはユマニチュードの理解が深まっているはずです。

ユマニチュードを5つのブロックに分けて徹底解説

認知症

5つのブロックは次のとおりです。

5つのブロック

・ユマニチュードとは
・ユマニチュードが目指すもの
・ケアのレベル設定
・ユマニチュードの4つの柱
・心をつかむ5つのステップ

ユマニチュードとは

ユマニチュードとは、フランスの体育教師のイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティの2人によって作り出された、知覚・感情・言語による包括的なコミュニケーションにもとづいたケアの技法です。この技法は「人とは何か」「ケアをする人とは何か」を問う哲学と、それにもとづく150を超える実践技術から成り立っています。認知症の人や高齢者のみならず、ケアをするすべての人に使える。たいへん汎用性の高い技術です。

ユマニチュードの目指すもの

ユマニチュードでは、「ケアされる人」と「ケアをする人」の関係が、ケアを通じて幸福な関係に成ることを目指しています。

その為に、ユマニチュードでは「ケアをしているわたしとはどんな存在なのか?そしてケアを受けているこの人はどんな存在なのか?」と問いかけることから始まります。

具体的には、「見ること」「話すこと」「触れること」といった技術を使い、双方にとって幸福な関係を作る努力をします。

その結果として、下記のような効果的な事例がみられることがあります。

・介護拒否があり暴れていた人がケアを受けるようになった
・言葉を発しなかった方が再び話すようになった
・寝たきりの状態だった方が立ち上がり、歩けるようになった   などです。

ケアのレベル設定

ケアをする人にとって一番大切なことは「相手のレベルに応じたケアを行っているか」を自らに問うことです。その人が持っている能力がどれだけ残っているか評価を行い、ユマニチュードでは3つのレベルからその人の目標を設定します。

ケアのレベル

①健康の回復を目指す(たとえば肺炎を治す)
② 現在ある機能を保つ(たとえば脳梗塞後の麻痺を進行しないようにする)
③ 最期まで寄り添う(回復を目指すことも、機能を維持することも叶わないとき、できるかぎり穏やかで幸福な状態で最後を迎えられるように、死の瞬間まで寄り添う。)

ユマニチュードの4つの柱

他者に認められることが他者との絆が人間の尊厳の源であるとユマニチュードでは言っています。しかし、その尊厳は病気や障害によって容易に崩されます。ユマニチュードではその尊厳を取り戻すための4つの柱を定義しています。

ユマニチュード

◎見る
視界に入り、水平に目を合わせて顔を近づけて、見つめる時間を十分にとり視線を掴みにく。
腰が曲がって下を向いてしまっている人には、下からのぞき込むように、ベッドに寝ている方が壁側を向いていたらベッドを動かしてでも正面から近づき、視線をつかみにいきます。

◎話す
優しいトーンで、穏やかに、歌うように話しかけます。反応がない人のアプローチには「オート(自己)フィードバック」という技法を用いてみます。
オートフィードバックとは:ケアの予告や実況中継をすることです。たとえば「これから腕を洗いますね」「温かいタオルを持ってきました」「背中から吹きますね。」「温かくなりましたね」「気持ちいいですね」などの言葉をかけ続けます。無言になりがちなケアの現場を言葉であふれさせます。

◎触れる
手のひら全体をつかって、なでるように優しく触れます。触れるときは飛行機が着陸するイメージで、手を離すときは飛行機が離陸するイメージです。このように触れると緊張が解けます。なおケアを行っている時は常に触れることが理想。手のひら全体で触れ、指は開くようにします。指が閉じていると拒否的なイメージを与えてしまいます。

◎立つ
「立つ」ことのメリットは、骨に荷重をかけて骨粗しょう症の予防や筋力の低下を防いだりすることがあげられます。また、血液循環を改善し、肺の容量を増やすこともできます。

ご高齢者は、立つ行為を怠ると1~2週間で寝たきりになってしまう場合があります。ケアが必要なご高齢者には、立って歩く機会を1日20分程度つくることが必要です。

たとえば40秒間の立位保持が可能な方なら、その時間を有効につかえます。40秒立っていただいている間に、背中、上肢、下肢などを清拭できます。1日に行うケアで、着替え、歯磨き、清拭、洗顔などを組み合わせると1日20分ほどの立位の時間を作ることが可能です。そうやって立位の時間を確保できれば寝たきりを防ぐことができます。

心をつかむ5つのステップ

ケアする人の存在に気づいてもらい、「この人とは良い時間を過ごせる」と感じてもらうための効果的な5つのステップがあります。

心をつかむ5つのステップ

5つのステップ

① 出会いの準備
② ケアの準備
③ 知覚の連結
④ 感情の固定
⑤ 再会の約束

① 出会いの準備
自分が来たことを知らせケアの予告をするステップです。来訪をつげたら相手の反応を待ち、徐々に存在に気づいてもうらいます。具体的には、3回ノックして→3秒待つ→再び3回ノック→3秒待つ→1回ノックして部屋に入る→ベッドの近くへいきベッドボードをノック。ノックを繰り返すことで、脳が覚醒していき、脳が人と会う準備をします。

② ケアの準備
正面から近づき、視線を掴みます。すぐにケアの話(「お風呂ですよ」「お薬ですよ」など)をするのではなく、「あなたに会いにきた」というメッセージを伝えます。それから、ポジティブな言葉でケアの提案をし、ご本人の同意を得てからケアを行います。もし3分以内に同意が得られなければ、いったんケアをあきらめます。

③ 知覚の連結
常に「見る」「話す」「触れる」の2つ以上の感覚を使い、ポジティブな情報を伝え続けます。

④ 感情の固定
気持ちよくケアできたことを相手につたえ、次回のケアにつなげます。ご本人にポジティブな感情記憶(「誰だかわからないけれど優しい人」「嫌なことはしない」など)をしっかりと残すことで次回のケアにつながります。

⑤ 再会の約束
「また会いたいですね」「また来ますね」と約束をします。ご本人が約束を覚えていなくても「喜び」や「期待」などのポジティブな印象が残っていれば、次回も笑顔で迎えてくれる可能性が高まります。

ユマニチュードを実践してみた効果と感想

ユマニチュード2

ユマニチュードを使ってみた感想としては、ぶっちゃけ効果はすぐに実感できるです。実体験を1つ紹介します。

デイに通っていた認知症の人に入浴の声かけをしたときの話です。

体験談

入浴の声かけをするために横から「〇〇さんお風呂の準備ができました。」と声をかけたら「びっくりした。」と驚かれ、入浴も拒否されました。次の機会にユマニチュードの技法を使いました。まずは正面に入り、視線を掴みました。目線があったのを確認して、目線の高さを合わせ「〇〇さんお風呂の準備ができましたよ。行きましょう。」声をかけるとにっこりと笑い、受けいれてくれました。

最初の声かけは、認知症の人はここがどこだかわからない状態にあったようです。突然横から声をかけられたため、ビックリして機嫌をそこねてしまったようです。ユマニチュードの技法を使うことで、ケアする人と認識してもらえて、入浴を受け入れてくれました。

ユマニチュードの良さは、丁寧さにあると思います。やはり丁寧なケアは相手に受け入れてもらえる。ということですね。

効果は分かったけど、ぶっちゃけ現場ではたくさんの入居者がいて一人一人に丁寧なケアなんかしている時間つくれないよ。そんな意見もあると思いますが、それは間違っています。

雑なケアをして入居者が不穏になったら、それを落ち着かせるのに何倍も時間を浪費してしまいます。一人一人に丁寧なケアをすることが、結果的には時間の節約になり、ケアされる人、ケアする人の幸福にもつながるのではないでしょうか。

とユマニチュードの記事を書きましたが、この記事で伝えたことはユマニチュードの極々一部です。ユマニチュードの書籍を一冊紹介しますので、興味のある人はご覧ください。

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