✔本記事の内容
・BPSDの具体的なケアの方法を5つ紹介します。
もくじ
BPSD(行動・心理症状)のケアの方法5つ
物を集める人のケア
ステップ1思いを聴く
できるだけ他の人にきづかれないようにしましょう。集めている人の場合は、集めていることについて聞くと、「知らない」「私じゃない」と不機嫌になることが多いです。そこで、あえてそのことには触れず、その人の今の思いを聴くように心がけましょう。疎外感や孤独感を感じているのかもしれません。
ステップ2情報を集める
寂しさや不安を打ち消すために物を集めている可能性があります。5つの要素から「寂しさや不安感」を想像しましょう。
➀脳の障害
・分からないことが増えて、不安やイライラが続いている。(記憶障害 見当識障害)
・伝えたいことを上手く伝えられずイライラしている。(失語)
②身体の健康状態
便秘により、お尻に違和感があり、トイレットペーパーがないと不安になる。
③生活歴
昔から大切にされていないという思いがあり、不安がある。
④性格
・昔から物を大切にする習慣がある
・人見知りで人と話すのが苦手で、孤独感を感じている。
⑤社会心理・環境
・話し相手がいなくて、寂しさを感じている。
・住み慣れた環境ではないので、落ち着かずイライラしている。
ステップ3ニーズを探す
理由が想像出来たら、それに合うケアの方法を考えましょう。
・便秘なら、食物繊維を多く含んだ食材を摂ったり、場合によっては医師に相談しましょう。
・新しい環境に馴染めず、退屈しているようなら、話し相手になってあげましょう。
・寂しさや不安感を感じているなら、その人の気持ちを受け止めて、信頼関係をきづくことを大切にして、接するようにしましょう。
歩き続ける人のケア
ステップ1思いを聴く
歩いている様子から何となく理由がわかりそうなら「トイレですか?」「お腹が空きましたか?」など、YESかNoで答えられる質問をしましょう。失語があるとうまく伝えられない場合があります。それ以外の時は、「何か用事がありますか?」と質問してみたり、「今日は天気がいいですね。」と共有できることで話しかけましょう。今いる施設や病院に慣れず、ストレスを感じているため、住み慣れた自宅に帰りたいのかもしれません。本人の思いを聴く姿勢で、信頼関係を気づいていきましょう。
ステップ2情報を集める
歩き回る理由は人それぞれですが、「家に帰りたい」「ここから逃げたい」「行きたいところがある」というのがよくある理由として考えられます。5つの要素から「歩きまわる理由」を想像しましょう。
➀脳の障害
・歩き始めた理由を忘れてしまう。(記憶障害)
・トイレに行きたいけど場所が分からない。(見当識障害)
・見えないものが見えたことで、不安がつのり逃げたいと思っている(幻視)
②身体の健康状態
お腹が痛くて、じっとしていられない。
③生活歴
長年働いていた仕事場に行こうとしている。
④性格
不安を抱きやすく、安心できる家に帰りたい。
⑤社会心理・環境
・うるさい、くさい、寒いなどの不快な環境から逃げたい。
・退屈で落ち着かず、イライラしている。
ステップ3ニーズを探す
理由が想像出来たら、それに合うケアの方法を考えましょう。
・うるさい、くさい、寒いなどの環境が原因なら、静かで快適な空間作りをしましょう。
・トイレの場所がわからず探しているなら、トイレと書かれた、大きな札を貼ってみるのも一つの方法です。
・お腹が痛くて、じっとしていられないならお腹をさすってあげたり、医師に相談しましょう。
大きな声を出すひとのケア
ステップ1思いを聴く
その人の思いを聴くことがとても大切です。「つらいですね。」「苦しいですよね。」と共感する姿勢で、寄り添いましょう。その人が何を訴えているのか探るようにしましょう。
ステップ2情報を集める
自分でうまく説明できず、大きな声を出していることがほとんどです。5つの要素からできるだけその人の情報を集めましょう。
➀脳の障害
・今どこにいるかわからないので、それを聴こうとしている(記憶障害・見当識障害)
・伝えたいことがうまく伝えられない(失語)
・見えないものが見えてパニックになっている(幻視)
・レム睡眠障害
②身体の健康状態
・便秘でお腹が痛い。
・口の中が痛い。(口内炎)
・眠れない
・うつのため不安がある。
③生活歴
大事な盆栽が近くにない。
④性格
一人だと不安で、誰かに近くにいて欲しいと思っている。
⑤社会心理・環境
・寒い、寝苦しいなどの不快感を感じている。
・施設や病院に入ったばかりで家族から離れて寂しい。
ステップ3ニーズを探す
理由が想像できたら、それに合ったケアの方法を考えましょう。
・その人が訴えたい具体的なことだけでなく、表面にあらわれない心の中の寂しさや不安感にmp気をくばりましょう。
・大声を出している人には、話しかけて安心してもらうことが大切です。
意欲が低下している人のケア
ステップ1思いを聴く
気分の落ち込みが見える時に、「元気がないですね。」「何かありましたか?」と聴いてみましょう。何か話してくれるかもしれません。今までしていたことをやらなくなった時は、その理由を聴いていみましょう。「面倒だから」「つまらないから」という答えが返ってきても責めたりせず、「面倒なんですね。」と共感の姿勢で接しましょう。
ステップ2情報を集める
5つの要素から「意欲の低下」の理由を想像しましょう。なお、無気力や気分の落ち込みが、意欲の低下ではなく、うつからきている場合があります。
➀脳の障害
今までできていた家事ができなくなって落ち込んでいる(実行機能障害)
②身体の健康状態
・便秘でお腹に違和感があり、やる気がでない。
・睡眠不足で、疲労感がありやる気がでない。
・うつにより、気分が落ち込む。
③生活歴
脳梗塞をしてから、できないことが増えて何もやらないでいる。
④性格
失敗するのが怖くて何もやる気にならない。
⑤社会心理・環境
・失敗すると「もうやらなくていい」と他の人に言われる。
・できるのに他の人にされてしまう。(支援と言って、できることもされてしまう。)
ステップ3ニーズを探す
理由が想像出来たら、それに合ったケアを考えましょう。
・家事ができなくて、落ち込んでいるなら一つ一つの作業を分断して伝えるようにしましょう。
・やる気がでないなら、一緒にやってあげましょう。好きなこと、得意なことを選ぶといいです。
・できないことはサポートして、自分でできることをやってもらい、自分でもできるという自信をもってもらいましょう。
ないものが見える(幻視)人のケア
ステップ1思いを聴く
幻視が見えると不安な気持ちでいることが多いです。不安な気持ちを支えながら、何が見えるのか、どんな気持ちなのかを寄り添いながら聴きましょう。時には、背中をさするなどすると安心感を与えられます。
ステップ2情報を集める
5つの要素の中でも、健康状態(薬)が重要になります。
➀脳の障害
ないものが見える(幻視)
②身体の健康状態
薬の副作用により幻視が見える。
③社会心理・環境
・ハンガーに衣服がかかっているとそれが人に見えてしまう。
・部屋の隅の暗がりが、人がかがんでいるように見える。
ステップ3ニーズを探す
理由が想像できたら、それに合ったケアを考えましょう。
・ハンガーにかけた衣服が人に見えるならそれを取り除きましょう。
・部屋の暗がりが人がかがんだように見えるなら、部屋のレイアウトを変え、暗がりを極力なくしましょう。
・幻視は暗い場所で見えることが多いです。できるだけ部屋を明るくしましょう。
・本人は不安を感じています。一緒に寄り添い、安心感を与えましょう。