「2021年介護報酬改定、0.7%の引き上げ」こんな話しを最近、耳にしませんでしたか?
テレビや新聞、WEBニュースでも取り上げていたので、なんとなく頭の片隅に残っている方も多いのではないでしょうか。
この介護報酬改定、法人の経営者はめちゃくちゃ注目しています。
なぜなら、介護報酬改定は法人の売上・運営に直結するからです。
直接関わることのない現場の介護士は、あまり関心のないモノかもしれませんね。
もしくは、「書かれている内容が難しすぎて理解できない」という方もいるでしょう。
この記事では、2021年度の介護報酬改定について、中学生でもわかるように解説します。
実は、介護報酬改定は、あなたの給与、待遇、職場環境に大きな影響を与えているんです。
もちろん、介護サービスを利用する高齢者、その家族の負担額にも影響します。
「給与が上がるの?」
「夏のボーナスは増える?」
「介護サービスの利用代金はどうなるの?」
この記事を読めば、そんな疑問が解決します。
✓この記事を書いている人
もくじ
介護報酬とは
介護報酬とは、事業者が利用者(要介護者、要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われる報酬のことです。
介護報酬の7割から9割は介護保険から支払われ、1割から3割は、利用者の自己負担となります。
介護報酬は、サービスごとに単位が決まっていて、事業所のサービス提供体制や利用者の要介護度に応じて、介護報酬は加算・減算される仕組みとなっています。
例えば、「ヘルパーさんが来てくれたら○○単位」とか「デイサービスを利用したら△△単位」といった感じです。
介護報酬は、この単位に10円程度をかけた値段です。
介護保険制度は3年ごとに見直し
介護保険制度は、3年ごとに見直しが行われていて、その都度介護報酬も上下してきました。
介護報酬は、現役世代の介護保険の負担や介護サービス利用者の負担とも大きく関わります。
そのため、財務省と厚生労働省の話し合いで決定されています。
2021年は、介護報酬改定の年です。
2021年度の介護報酬改定0.7%引き上げ
厚生労働省は、2021年度の介護報酬の改定率を+0.7%としました。
0.7%のうち、0.05%がコロナ対策としてあてられていて、2021年9月までとされています。
深刻さを増す人手不足、新型コロナウイルスの感染拡大のよる厳しい事業所の経営環境、などを踏まえて決定された数字です。
介護現場の関係者からは大幅増を求める声があがっていましたが、政府は1%に満たない小幅な引き上げにとどめました。
その理由は、現役世代の保険料や利用者の自己負担に跳ね返ることを懸念したためです。
プラス改定は前回の2018年度に続いて2回連続です。
介護職員の賃上げなどを図った臨時改定(2017年度、2019年度)も含めれば4回連続です。
介護報酬以外にも、(1)感染症や災害への対応力強化、(2)地域包括ケアシステムの推進、(3)自立支援・重度化防止の取り組みの推進、(4)介護人材の確保・介護現場の革新、(5)制度の安定性・持続可能性の確保などの5つの柱が示されていますが、この記事では介護報酬のみに絞って解説していきます。
ここからは、訪問介護と通所介護を例に出し、基本報酬がどう変わるのか解説していきます。
訪問介護の基本報酬の見直し
身体介護中心型(現行 ⇒ 改定後)※1回につき
20分未満 166単位 ⇒ 167単位
20分以上30分未満 249単位 ⇒ 250単位
30分以上1時間未満 395単位 ⇒ 396単位
1時間以上1時間30分未満 577単位 ⇒ 579単位
以降30分を増すごとに算定 83単位 ⇒ 84単位
生活援助加算※ 66単位 ⇒ 67単位
※引き続き生活援助を行った場合の加算(20分から起算して25分ごとに加算、70分以上を限度)
生活援助中心型(現行 ⇒ 改定後)※1回につき
20分以上45分未満 182単位 ⇒ 183単位
45分以上 224単位 ⇒ 225単位
通院等乗降介助(現行 ⇒ 改定後)※1回につき
98単位 ⇒ 99単位
通所介護の基本報酬の見直し
通常規模型(現行 ⇒ 改定後) ※7時間以上8時間未満の場合
要介護1 648単位 ⇒ 655単位
要介護2 765単位 ⇒ 773単位
要介護3 887単位 ⇒ 896単位
要介護4 1,008単位 ⇒ 1,018単位
要介護5 1,130単位 ⇒ 1,142単位
大規模型Ⅰ(現行 ⇒ 改定後) ※7時間以上8時間未満の場合
要介護1 620単位 ⇒ 626単位
要介護2 733単位 ⇒ 740単位
要介護3 848単位 ⇒ 857単位
要介護4 965単位 ⇒ 975単位
要介護5 1,081単位 ⇒ 1,092単位
大規模型Ⅱ(現行 ⇒ 改定後) ※7時間以上8時間未満の場合
要介護1 598単位 ⇒ 604単位
要介護2 706単位 ⇒ 713単位
要介護3 818単位 ⇒ 826単位
要介護4 931単位 ⇒ 941単位
要介護5 1,043単位 ⇒ 1,054単位
地域密着型(現行 ⇒ 改定後) ※7時間以上8時間未満の場合
要介護1 739単位 ⇒ 750単位
要介護2 873単位 ⇒ 887単位
要介護3 1,012単位 ⇒ 1,028単位
要介護4 1,150単位 ⇒ 1,168単位
要介護5 1,288単位 ⇒ 1,308単位
0.7%引き上げで介護士の給料は上がる?
「介護報酬が増えるなら、事業所の収入も増えるわけだから我々介護士の給料も増えるんだよね?」と期待している介護士もいるのではないでしょうか。
結論を言うと、介護士の給料を上げるかどうかは、事業所の判断によります。
なぜなら、+0.7%の改定分を介護職員に配分しなければいけないという決まりはなく、収益の使い道は、事業所にまかせられています。
例えば、新型コロナの影響で、稼働率の落ちている通所施設などは、+0.7%改定分を介護職員に配分する余裕はなく、経営維持に精一杯のはずです。
とはいえ、過去の介護報酬改定は、介護労働実態調査のデータを見ると、正規職員賃金に一定の影響を与えているようです。
経営状態のいい事業所や太っ腹経営者がいる事業所の正規職員は、基本給や夏のボーナスUPを期待してもいいかもしれませんね。
※介護労働実態調査のデータを見ると、非正規職員の賃金には、介護報酬改定は影響を与えていないようです。
0.7%引き上げでサービス利用者の介護費用は増える
2021年4月から、介護サービスの基本報酬が0.7%上がるので、介護サービスを利用する利用者やそのご家族の費用は増えます。
「具体的にどれくらい増えるの?」具体例を出して解説します。
具体例1 身体介護(30分以上1時間未満)を1ヶ月で12回利用している場合
単位 | 回数 | 合計単位数 | |
現行 | 395 | 12 | 4740 |
改定後 | 396 | 12 | 4752 |
差額 | +12 | ||
1単位10円で計算 | 120円の増加 |
具体例2 通常規模のデイサービスを1ヶ月で12回利用している場合
※要介護1 7時間以上~8時間未満
単位 | 回数 | 合計単位数 | |
現行 | 648 | 12 | 7776 |
改定後 | 655 | 12 | 7860 |
差額 | +84 | ||
1単位10円で計算 | 840円の増加 |
あくまでも、基本報酬のみの増加分を計算しただけです。
これに、地域区分や加算なども加われば、もう少し費用が増えると思っておいてください。
まとめ:介護職員の給料アップは経営者の判断による
今回は、最近いろんなメディアで発表された2021年度の介護報酬改定について解説しました。
✓本記事のおさらい
2021年度の介護報酬の改定率は、+0.7%
0.7%のうち、0.05%がコロナ対策としてあてられていて、2021年9月まで。
介護報酬改定で、介護士の給料は上がるのか?
結論は、事業所の判断に委ねられます。
今回は以上になります。