認知症

「幻視と妄想 見えないものがありありと見える」症状のケア

幻視

本記事の内容

・「幻視と妄想 見えないものがありありと見える」症状のケア

幻視と妄想 見えないものがありありと見える

レビー小体型認知症の人にみられる特徴的な症状といえば、視覚にまつわるものがあげられます。例えば、幻視や見まちがいです。またそれに伴う妄想や作話などもしばしば起こります。視覚機能に異変をきたす原因は、後頭葉(脳の後ろ側)の血流が悪くなることによって起こると言われています。

見まちがいや錯覚

多くみられるのが見まちがいや錯覚です。これを錯視と呼ぶこともあります。

見まちがいや錯覚の例

・ハンガーにかけてある洋服が人に見える
・人形を女の子と見まちがえる
・3つの点が人の顔に見える
・水道のホースが蛇に見える
・丸めた布団が動物に見える

また、物体や周囲がゆがんたり、ひずんだり、曲がったり、あるいは大きく見えたり、小さく見えたりする変形視が起こることもあります。

変形視の例

・天井や柱がゆがんで見える
・廊下や道路が波打って見える
・自動車のボンネットがひずんで見える
・平面に描かれたものが浮かんで見える

人の顔が区別できなくなることもあります。例えば私たちが蟻を見て一匹一匹の顔を区別することが困難ですが、それと同じようにレビー小体型認知症の人には、どの人も同じ顔に見えてしまうことがあります。また、夫や妻が別の人の顔に見えてしまうこともあり、「嫁はどこに行った?」と探したり、家族で口論になるなど、トラブルになることもあります。

幻視(本人には実物としてありありと見える)

幻視とは、実際にないものが本人にとってはありあり(いきいき)と見える症状です。幻視はレビー小体型認知症の特徴的な症状です。

幻視の例

・ねずみが壁を這っている
・蛇が天井に張り付いている
・ごはんに上にに虫がのっている
・知らない人が座敷に座っている
・おばさんがこっちを見ている
・窓から男の人が入ってくる
・女の幽霊が現れる
・大きな川が流れている
・光線が飛んでくる
・きれいな花が咲いている
・物が吸い込まれていく

など動物や人、環境に関するものなど様々です。これらの幻視は動きを伴います。「あそこの隙間に入っていった。」や暗がりをさして、「ここにいる。」などと話すレビー小体型認知症の人がいます。一般に色彩がはっきりしていることが多いものの、白黒に見える人もいるようです。レビー小体型認知症の人は、記憶障害が軽い人が多いので、数日たっても幻視のことを覚えています。

幻視は、日中よりも夕方から夜にかけて増える傾向にあります。これは、周囲が暗くなる外的要因と視覚を含む認知機能が低下するといった内的要因が関係していると思われます。

幻視や見まちがいを減らすには環境の改善が有効

幻視や見まちがいは室内の環境が誘発している場合が少なくありません。部屋の廊下の照明の具合、光と影の状態、壁の洋服、畳やベッドのシミなどが幻視や見まちがいの要因になります。部屋の隅が暗かったら、「そこに人がたっている」ベッドのシミを見てネズミと見まちがうなどが起こります。その為、こういった環境の改善をすることが大切になります。

具体的には

★蛍光灯を白熱灯に変える

蛍光灯は影を作りやすく、高速でチカチカしているため、幻視を誘発しやすいです。蛍光灯を避けることは一つの方法です。

★なるべく室内の照度を統一する

「明るい部屋」「暗めのふろ場」「とても暗いトイレ」といったようにそれぞれに部屋で明るさが異なると幻視を誘発しやすくなります。同じ照度、同じ電球を使うことが幻視を減らすのに効果的です。

★影のできる場所を極力少なくする

影が見まちがいの要因となることが多々あります。極力を影を作らない室内のレイアウトにすることが大切です。

★壁に洋服をかけない

壁にかかっている洋服を見て、人と見まちがうことがあります。そういった状況を回避するために壁に洋服をかけることはおすすめしません。

★ベッドや壁のシミを取り除く

ベッドや壁のシミがネズミや小動物に見えてしまうことがあるので取り除きましょう。

★壁紙の模様はシンプルなものにする

はでな模様の壁紙は小動物の見まちがいを起こすことがあります。シンプルなものにすることで、見まちがいを減らせます。

★同じ色の洋服を着たり、同じエプロンを毎回つける

洋服の色や、エプロンが変わることで人の見まちがいが起こることがあります。同じ色の洋服や同じエプロンをつけることで人の認知を高めることができます。

幻視が現れたときの対応

もっとも大切で大事なことは、本人にとってその幻視がありありとハッキリと見えることです。介護者はそのことを十分に受け入れることが大切です。

「何も見えませんよ!」「そんなのは錯覚ですよ!」などと強く否定したり、感情的に対応すると、余計に幻視を増長させたり、それが妄想へと発展したり、抑うつ症状をひどくさせてしまうことにつながりかねません。

まずは、本人の気持ちを受け止めましょう。

あまり恐がっていないようなら

「本当はいませんが、あなたには見えるからしかたがないですね。」
「そういう病気だから、見えるのもムリはないですよ。」という風に冷静に答えてあげたり、
「確かにいるけど、悪さをしないから大丈夫ですよ。」
「おまじないをして帰ってもらいましょう。」などユーモアを入れて答えてあげるのも有効です。

恐がっていたり、興奮していて焦っているようなら、十分に話を聴いてあげましょう。時には見えない相手に対して、介護者が立ち向かったり追い払う演技も有効かもしれません。

介護者が、「そんなものはいないですよ。」と穏やかに繰り返し説明することで、本人が自分だけに見える幻視と理解できて、安心を得れることもあります。ただしその場合は、時間をかけて本人の訴えに耳を傾けることが大切です。場所を変えて話を聴くのも一つの方法です。

いずれにしても、はぐらかしたり、ごまかしたりすることはレビー小体型認知症の人には適切ではありません。なぜなら、幻視や見まちがいは本人にとってありありと見えるため、ごまかしやはぐらかしは通用しません。本人の気持ちに寄り添うことが大切です。

幻視は近づいたり、触ったりすると消えてしまうことがほとんどです。ですから、近づいたり、触ることを促すのも一つの方法です。本人が気味悪がって近づかないことが多いので、介護者は一緒に近づいてあげましょう。「じゃあ一緒にそこにいって触ってみましょう。」と導き「ほら消えちゃうでしょう。」と安心させてあげることがよい方法です。

なお、介護者はいつ、どこで、どんなものが、どんな時に幻視が見えたのか把握しておくことが大切です。脱水や便秘 風邪などがあると幻視の頻度があがります。幻視がそういったバイタルのサインになることがあるのです。そのために、詳細な記録をとりましょう。

幻視が妄想へと発展することも

レビー小体型認知症の人には、幻視や作話がよく見られます。アルツハイマー型認知症の人には「嫁に財布を盗られた!」といった被害妄想がありますたが、これは記憶障害によって生じるものです。

一方レビー小体型認知症の妄想は、幻視が発展して起こることがほとんどです。したがって、アルツハイマー型認知症の人の「被害妄想」とはいくらか違います。

たとえば、「ハエがいっぱい飛んでいる」と殺虫剤をまいたり、「子供が遊びに来ている」「料理を作ってあげなけいと・・・」と幻視を信じてしまうものです。

レビー小体型認知症で多いのは、「嫉妬妄想」です。嫉妬妄想とは例えば「夜中、ベッドで夫が別の女と寝ている。」「妻の愛人が窓から妻を誘っている。」といった嫉妬を伴う妄想です。これらは、過去の夫婦間の軋轢や過去の体験がもとになっていることがあります。

妄想が起こった時の対応

原因の幻視が消えることで、妄想がおさまることがありますが、幻視が消えてもいっこうになくならず、エスカレートすることもあります。こういった妄想が、抑うつ症状を進行させたり、興奮や暴力を生じさせたりします。

一般に妄想は、本人が頑なに思い込んでいるので、周囲がいくら否定しても正常な思考に戻すのは非常に困難です。

したがって、優しく手を握ってあげたり、心拍数のリズムで背中をさすってあげるなど精神的な安定を心がけてください。

妄想の対象とされた家族や介護者は、距離をとりましょう。「助けいたい」「妄想を取り除いてあげたい」そういった気持ちは分かりますが、下手に近づくことで妄想が長引いたり、攻撃的になってしまう要因となります。

施設では、介護者を交代したり、家族では、他の親類や信頼できるケアマネージャーに関わってもらうことで妄想を軽減できます。

最後に

幻視や見まちがいの症状で一番苦しんでいるのは本人です。介護者はそのことを理解してあげて、思いによりそうことが大切ではないでしょうか。

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