認知症

【介護士向け】物盗られ妄想の原因と対応の仕方

悩む人
入居者の物盗られ妄想い困っています。「財布がない!あなたが盗ったんだろ!」と罵ってきます。いくら説明しても納得してくれず、さらに暴力を振るうしまつで手に負えません。

そんな悩みにお答えします。

 

泥棒扱いされれば傷つくし、「自分のケアや接遇が悪いのかな?」と思い悩むかもですが、気にしなくて大丈夫です。

なぜなら、物盗られ妄想は普段から一番熱心にケアしてくれてる人がターゲットになりやすいからです。

ケアや接遇どうこうというわけではないので気にしないでいきましょう。

そこで今回は物盗られ妄想の改善や介護士の負担軽減につながるように、物盗られ妄想の原因と対応の仕方を記事にしました。

 

本記事の内容

・物盗られ妄想とは
・物盗られ妄想の原因
・物盗られ妄想の特徴
・物盗られ妄想の対応の仕方
・プロならケアの3つのステップを回すべし

結論から言うと、物盗られ妄想は完全になくすことはできないが、ケアの仕方で軽減することはできます。

 

本記事の信頼性

この記事を書いている僕は、介護歴10年以上。現在も認知症対応型通所介護の相談員をしています。

日頃から物盗られ妄想のある方と接していて対応の仕方を試行錯誤しています。また、家族からの相談にも答えています。

 

この記事を読み終わった頃には、物盗られ妄想の改善の糸口が掴めているはずです。

 

物盗られ妄想とは

物盗られ妄想とは、「財布が盗まれた」「宝石が盗まれた」のように大事なものを盗まれたと訴える症状です。

いわゆるBPSD(行動・心理症状)の一つになります。

 

老人福祉施設では、1年間に約5%の人が「物盗られ」を訴えます。

「結構少ないなぁ」と思ったかもですが物盗られ妄想は厄介な症状です。

なぜなら、介護士や他の入居者が犯人扱いされてしまう点です。

時には、入居者同士でケンカになることも…

 

物盗られ妄想の原因

物盗られ妄想が起こる原因は主に3つです。

主な原因

・記憶障害や思考力の低下
・病気に対する恐怖心
・家族や親友など身近な人がいなくなる喪失感や不安感

といったところです。一つずつ解説します。

 

記憶障害や思考力の低下

認知症になると誰でも起こる症状が、中核症状です。記憶障害や思考力の低下は中核症状の一つになります。

財布をカバンにしまった記憶が抜け落ちてしまうため、本来あるはずの場所に財布がないと「盗まれた」という被害妄想を引き起こすことがあります。

 

僕のデイに通っている認知症の利用者さんがこんな話をしていました。

カバンにしまったはずの財布がないから、娘に「あなたが盗んだんでしょう。返して!」と言ったら、「盗むわけないじゃない。」と娘に怒られたと笑ってました。

認知症の方が、自分の物盗られ妄想の記憶を話してました。「へぇー」と不思議に思いました。

 

病気に対する恐怖心

認知症の方は、「覚えられない」「忘れてしまう」ことを自覚しています。

認知症であることを一番自覚しているのは本人です。

 

記憶を失っていくことは恐怖です。そういった恐怖心から逃れるために、自分を肯定して「盗まれた」という被害妄想を起こすことがあります。

 

家族や親友など身近な人がいなくなる喪失感や不安感

高齢になると、家族や親友が亡くなったり、財産が少なくなったり、病気になったりと辛いことが重なりがちです。

そういったストレスから精神が不安定となり被害妄想が起こることがあります。

 

物盗られ妄想の特徴

物盗られ妄想の特徴は主に4つです。

特徴

・初期に起こりやすい
・身近な人がターゲットになりやすい
・女性に多い
・アルツハイマー型認知症に多い

といったところです。一つずつ解説します。

 

初期に起こりやすい

物盗られ妄想は、初期に起こりやすい症状です。

認知症が進むにつれて症状は軽減していきます。

人によっては一年以上続くこともあります。

 

身近な人がターゲットになりやすい

物盗られ妄想のターゲットになるのは、親身になってくれてる人です。

一番丁寧に接してくれる職員などがターゲットになりがちです。

 

疑われる人からすると「自分のケアが間違ってるのかな」と思い悩むかもですが、あなたのケアが間違ってるわけではないので気にしなくて大丈夫です。

 

女性に多い

物盗られ妄想は、女性に多い症状です。

その原因は分かっていません。

 

アルツハイマー型認知症の多い

物盗られ妄想は、アルツハイマー型認知症に多い症状です。

アルツハイマー型認知症の経過のどこかで、およそ3割の人が物盗られ妄想を起こします。

 

物盗られ妄想の対応の仕方

物盗られ妄想の対応の仕方は主に12コあります。

対応の仕方

・じっくり話を聴く
・一緒に探す
・役割を持ってもらう
・話題を変える
・対応する介護士を変える
・貴重品を入れる棚を一つにする
・収納棚を整理して探しやすくする
・貴重品を入れる棚を整理して探しやすくする
・貴重品を入れる棚に鍵をかける
・財布などの貴重品を預かる
・家族にも一緒に探してもらう
・病院を受診する

といったところです。一つずつ解説します。

 

じっくり話を聴く

ご本人は、「盗まれた」と思っていて不安を感じています。

まず大前提として、否定せず聴くことです。

ありえない話だっとしても「盗むわけないでしょう」「勘違いじゃないの」と怒るのはNGです。

 

聴き方は、見つからない物は何か、形・色・大きさは、いつまで合ったのかなど具体的に聴くと共感の姿勢を示せます。

 

具体的に、他の入居者の名前をあげて、「盗んだ」と言った時は、肯定してはいけません。

「そんなことないと思いますよ」とやんわり否定しましょう。「どこかにしまい忘れているかもしれないので、一緒に探しましょう。」と言いましょう。

泥棒扱いされた人には、「〇〇さんが盗ってないことは分かってます。」と伝え安心してもらいましょう。

 

一緒に探す

盗まれた物を一緒に探しましょう。

見つかれば症状は落ち着きます。

ただ、まれに「あなたが盗ったんだから置いてある場所を知ってたんでしょう」とヒートアップする場合もあるので、そんな時は、ご本人をうまく誘導して本人に見つけてもらうようにしましょう。

 

もし、他の業務で時間が探す時間が作れない時は、「15時にきます。あとで一緒に探しましょう」と時間を伝えましょう。

 

探し物が見つからない時はやっかいです。そんなときは、「見つからないですね。また後で探しましょう」と答えましょう。

 

役割りを持ってもらう

皿洗いやテーブル拭き、お花の水やりなど認知症でもできる役割りを持ってもらいましょう。

施設に入っていてただ暮らしているだけだと、「自分はここにいていいのか」と不安になります。

自分の役割があることで、自分の存在価値が満たされ、ストレスが軽減します。

結果的に症状の頻度を減らすことができます。

 

話題を変える

「今日の食事は〇〇です。」「今日はいい天気ですね」と話題を変えるのも効果的です。

「歌を聴きましょう。」など気分転換を図るのもありですね。

 

対応する介護士を変える

特にターゲットにされている介護士が対応して興奮し攻撃的になっている場合には、いくら話しても無駄です。

対応する介護士を変えることで落ち着くことがあります。

 

貴重品を入れる棚を一つにする

収納棚がたくさんあると、本人もどこにしまったか分からなくなる場合があります。

貴重品を入れる棚を一つに決めてしまうのもありです。

棚にテプラを貼るなど目印をつけるのも分かりやすいかもです。

 

収納棚を整理して探しやすくする

認知症の人は服を出したり、しまったりを繰り返し棚の中がぐちゃぐちゃになってることがあります。

定期的に棚を整理しておくと探しやすく、見つけやすくなります。

 

貴重品を入れる棚に鍵をかける

貴重品を入れる棚に鍵をかけるのもありです。

鍵がかかっていればご本人も安心できます。

鍵はご本人に説明して職員が預かっておいてもいいでしょう。

 

財布などの貴重品を預かる

ご本人に説明して職員が貴重品を預かるのもありです。

症状が出たときは、職員が預かっていることを伝えれば落ち着くでしょうし、それでも落ち着かないときは貴重品を見せてあげましょう。

 

家族にも一緒に探してもらう

ご本人が興奮して攻撃的な態度をとって、職員では対応が難しいケースは、家族に協力してもらいましょう。

家族と話したり、一緒に探してもらうと症状が落ち着くことがあります。

入居者にとって、時々会いに来てくれる家族の存在は大きなものです。

 

病院を受診する

興奮して攻撃的な症状が続く場合には、病院を受診して薬を処方してもらったり、時には精神病院での入院治療もありです。

 

といろんな対応方法を解説しましたが、プロの介護士なら小手先のテクニックではなく、ケアの3つのステップを回すべしです。

ケアの3つのステップの回し方は次の見出しで解説します。

 

プロならケアの3つのステップを回すべし

ケアの3つのステップとはこちらです。

3つのステップ

・思いを聴く
・情報を集める
・ニーズを見つける

これは、パーソンセンタードケアの考えに基づいて作られたケアの仕方です。

パーソンセンタードケアについては、下記の記事で解説しているので詳しくはそちらをご覧ください。

パーソンセンタードケア
パーソンセンタードケア1
【介護士向け】認知症ケアを学ぶならパーソンセンタードケアがおすすめ

 

それでは、具体的に解説します。

 

ステップ1:思いを聴く

物が盗まれたと興奮している人の話を聴きましょう。

「あなたが盗んだんでしょう」と責められても「違います」とすぐに否定せず、「そんなことないですよ」とやんわりと返し、「私は持っていないです。一緒に探しましょう。」と答えてあげましょう。

 

ステップ2:情報を集める

物が盗られたと思う背景の要因には、人によって変わりますが、疎外感や孤独感、視力や聴力の低下、お金で苦労した経験などがあると言われています。

5つの要素からその人の要因を探しましょう。

 

【障害】

・自分がしまったことや誰かが持っていったことを忘れてしまっている(記憶障害)

・施設に入ったばかりで、ここがどこかわからなくて物の場所も分からなくなっている(見当識障害)

【健康】

・視力が低下していて、物を探すのが難しい

・聴力が低下していて、誰かが物を持っていったと話していると誤解している

【生活】

・お金に苦労した経験があり、財布が少しでもそばにないと不安

【性格】

・疑い深い性格のため、人を信用するのに時間がかかる

【環境】

・疎外感や孤独感を持っていて、人を信用できない

 

ステップ3:ニーズを見つける

症状の要因が想像出来たら、それに合うケアの方法を見つけましょう。

 

・視力や聴力の低下が原因ならメガネや補聴器を検討しましょう。

・財布がそばにないと不安なら、ポケットに常に入れておくのもありです。1000円ほどの少額なら問題なしです。

・疎外感や孤独感を感じているなら、聴く時間や話す時間を増やし信頼関係を築きましょう。

こういったニーズを職員間で話しあい、ケアで実践しましょう。

 

ケアの案

入居して1か月なので、職員との信頼関係が築けていないかもしれない。

ここが安心できる居場所になるように、コミュニケーションの時間を増やす。

家では、家事が日課だった。皿洗いをお願いして役割りを作る。

こういったサイクルを回すことが大事です。

そして記録に残していきましょう。

 

まとめ:プロならケアの3つのステップを回すべし

今回は、物盗られ妄想の原因と対応の仕方の記事を書きました。

 

おさらいとして、物盗られ妄想が起きたときは、3つのステップを回しましょう。

3つのステップ

・思いを聴く
・情報を集める
・ニーズを見つける

といった感じです。

 

家族向けの物盗られ妄想の対応の仕方の記事もあるので、家族の方はそちらがおすすめです。

家族向け
【家族向け】物盗られ妄想の原因と対応の仕方

今回は以上になります。

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